今回、あきらくんの支援をすることにした。
この支援をしようと思った背景と、格ゲーコミュニティとプロゲーマーについて思うことを書く。
格ゲーコミュニティはデカくなった
最初にやった格ゲーはスト2。 中学生になってゲーセンに通うようになり、KOF98の頃には地元では強いほうでそのまま高校からはカプエスやギルティという感じでゲーセンで通ってた25年前*1。
あの頃は闘劇があったり、小さいゲーセンの大会があったりで盛り上がってたと思う。だけどここ10年でしっかり衰退して、ゲーセンもどんどん無くなって、格ゲーはこのまま衰退していくのかなと思っていた。 それがスト6というバケモンな大ヒット作が出て、あの当時を超えるような盛り上がりを見せている。 EVOJも何年も参加しているけど、7000人を超えるような大会は例がない。 熱量も闘劇やサミーズカップよりも高いように思う。
特にガチ勢じゃない人たちが、スト6をやってるのがすごいなと思うし、それによって明らかにコミュニティがデカくなった。 色んな人達の尽力の結果だし、格ゲーコミュニティの形は変われど、これは良いことだと思う。 俺はゲーセンコミュニティに感謝しているし大好きでゲーセンコミュニティが緩やかに衰退していることは寂しい気持ちがあるけど、これはもう止められないし格ゲーコミュニティが継続していくうえでは必要な痛みだと思う。
プロゲーマーが当たり前になった
そんな中、ウメハラが第一人者として始まったプロゲーマーが当たり前になった。 ストリートファイターリーグ(以下SFL)やカプコンカップはすごい集客をしているし、ライト層の人も見るようなまさにコンテンツとして成立している。 これはVチューバーなどのストリーマー影響も大きいとは思うけど、そんな大会を見て、憧れて、プロゲーマーを目指す。 これもとても素晴らしいと思うし、プロゲーマーたちが生み出す名試合は震える瞬間がある。
プロとしてやっていく難しさ
なのに、プロゲーマーとして生活することは難しい。 プロゲーマーになること自体が狭き門なのに対してリターンが少なすぎる。 他のプロのように人気や成績で収入に相関があることは良いんだけど、単純にリスクに対して収入が少なすぎるし、一般的なスポーツのようなセカンドキャリアもない。 野球やサッカー、ゴルフなどは、プロとしてのキャリアが終わったあとに、解説者やコーチ、指導者などのセカンドキャリア*2がある。
似たような構造だと麻雀とか将棋とかもセカンドキャリアがあるし、将棋なんかは棋士になる大変さに相関して報酬がちゃんとあるし、協会のサポートもある。 それに対してeスポーツの世界は未成熟だ。
マネタイズできる金脈は未だあるかも知れないが現状はまだまだ適切にお金が動いているようには思えない。 ビジネスだからもちろんお金を生み出した総数がプロゲーマーに還元される構造なのは当然なのだけど、そうだとしてもプロゲーマーの収入は少なすぎるし、10年後のキャリアみたいなロールモデルが不透明過ぎる。 そうは言ってもマネタイズはムズいんじゃ!!というのはわかるし、カプコンもSNKも資本主義に則った一企業でしかないからその責任を全面に負ってもらうのも違うとは思う。
そういったアンバランスな状態がプロゲーマーとして生きていく難しさの背景にあると思う。
無職になる恐ろしさ
格ゲーのプロゲーマーは、フリーランスみたいなもんだから契約が終われば当然無職になって収入が無くなる。 ストリーマだったり、兼業ならまだいいけど、強さを追い求めて専業プロゲーマーとしてやっている人は、契約が終わったら突然無収入になる。 経験のある人ならわかると思うけど生きるにはお金がいる。 そして無収入になると恐ろしい勢いで口座の残金が減っていく。 俺もスタートアップを渡り歩いているのですげー勢いで残金が減っていくストレスを知っているし、その結果正常な判断をできなくなった経営者を沢山見た。
そしてプロゲーマーは基本的には個人事業主なので失業保険も無い。 一般的なフリーランスとは違い、契約終了のタイミングで公開告知なので事前に営業することも難しいし、SFLのようなリーグ戦は、契約終了タイミングで他のチームが決まっていれば、契約終了後に次のチームが決まらないこともある。
今回のあきらくんも、契約終了して突然無職で無収入。 でもプロゲーマーを続けるためにはアピールする必要があって、アピールのためには海外遠征を自腹でやる必要がある。 これはオリンピックを目指すようなアスリートで似たような構造はあるものの、少なくともビジネスとして成立しているeスポーツの世界でこの構造は継続性を考えたときに不健全だとは思う。
ストリーマーをやるためには有名になる必要がある。
— そーだい@初代ALF (@soudai1025) 2026年4月30日
有名になるにはSFLが近道。
SFLは参加チームから声がかかる必要がある。
でSFLに出れるようになるには大会で結果を出す必要がある。
大会に出るには遠征費が必要。
とにかくビジネスモデルが初手投資フェーズなんだよなぁ。
あきらくんと話をしたとき、「SFLがやっぱ一番思入れもあるし、今年もSFLに出たい」という話をしていた。 今回、たまたまiXAに入れたから結果論としてはいいけど、入れない世界線もSFLに出れない世界線もあるわけで、そうなると来年まで1年間どうするの?となる。 無収入で来年のSFLのためにバイトでもやりながら新しいスポンサーを探すのか……?みたいな。 あきらくんに限らず、プロゲーマーの多くは毎年この問題と向き合っているし、プロゲーマーとしてやっていく難しさはここにある。 ここはアーティストや芸人みたいな世界に近いかもしれない。 でもそこと比べてもプロゲーマーにはちょっと夢がない。
バランス調整という難しさ
リスクリターンの話でいうと自分のキャリアみたいな点でもプロゲーマーは難しい。 eスポーツの世界、特に格ゲーは自分の強さが重要な商品なわけだが、それがメーカーの影響をめちゃくちゃ受ける。
実際に強いやつはキャラを変えていけるけど、それでも突然自分のキャラが弱体化してしまうこともあるし。 例えば俺は今は舞を使っているけどスト7が出たときに舞は居ないと思う。 そうなると誰を使うんだっけ?って問題もあるし、ラシードとかそうだけど、ガチくんとかは実際に自分が使っているキャラが最初いなくて大変そうだった。 よっさんが「スト7でジュリが居なかったとき、俺は多分スト7をやらない」って言ってて、それもすごくわかるし、自分の商売道具が突然無くなるリスクがある。
俺は餓狼のMr.karateみたいな明らかな最強キャラ、使う側だけど職人キャラとして特定のキャラを長年使っているブランディングの人はそうなると簡単にキャラを変えとはいかない。 今のキャラで勝てないとプロゲーマーとして価値が下がる、けどキャラ変えてしまうと自分の今までのブランディングを捨てるリスクもある。 だから一概に強いキャラに変えましょう、は簡単な話じゃない。
あきらくんもKOFではゴリゴリの強キャラ使いなのに今もキャミィを使っている。 もちろんキャミィが合ってるとか好きとか練度の問題もあるけど、キャミィ使いというブランディングが呪いの装備になってるんじゃないかなって心配もある*3。 でも、あきらくんはくっそ昔は弱キャラ使ってた印象あるからやっぱり職人キャラのほうが好きみたいなのはあるかもしれん。
ゲーム性の相性や好みと人の多さについても悩ましい。 正直、俺はKOFとかギルティのほうがやってて好きだし、能力的にもそっちのほうが向いてると思う。 でもなんでスト6やってるの?って言われたらそりゃ人が多いからだ。 ある程度のレベルになると同レベルの人を探すのが大変だし、KOF15とか面白いけど一生マッチングしない。 だから人の多いゲームをやる。
それはプロゲーマーも一緒でプロとしてやっていくならよっぽどそのタイトルのトップ層でも無い限り、一番流行っているゲームをやるしかない。 俺の永遠のライバル(勝手に俺が言っている)のシャオハイだって餓狼とスト6やってる。 今でも世界最強クラスなのにKOF98でSWCには出場しない可能性が高い*4。
ソフトウェアエンジニアだって発電所が無ければ仕事ができないし、石油がなければ電気も作れないけど、そういう次元よりももっと不安定なところでプロゲーマーはやっていく必要がある。 これは20年、30年と続けていくには難しい。 将棋も麻雀も多少のゲーム性の変化はあるけど、基本的にはルールは変わらない。 格ゲーはゲーム性が変わるし、キャラも変わるし、ルールも変わるし、やりこみが突然無になることもあって、やっぱ安定して成果を出すのは難しいなと思う。
職業として成立してない
そう考えた結果、これを言うのは不適切な表現だから正確じゃないなとは思うけど、それでもやっぱ格ゲーのプロゲーマーは職業として成立していない。
前述もしたけどリスクに対して収入が少なすぎる。
例えばスト6でプロになったとして、スト6があと例えば5年続いたとしてもスト7が流行る保証はない。
スト5と一緒だとあと1年しかなくて *5、ブームもいつまで続くかわからない。
ここシーズン5までだから5年だと思ってたけど7年でした*6。 九条さんご指摘ありがとうございます。
内容については同意以外の何物でもないのですが、スト5は一応7年ちょい(2016年2月‐2023年6月)続いたので、スト6がy4に入るタイミングってことを考えるとあと3年くらいはありそうという印象です。
— R-MOON/九条 (@R_MOON_Kujou) 2026年6月24日
そこに対して、今の20台前半はいいけど30代は本当に人生をかけた挑戦だ。
例えば俺は起業してるけど、起業も確かにリスクは沢山ある。 でもその分、実力や結果に応じて相応のリターンがあるし、仕事の内容にもよるけど事業譲渡とか再就職のようなセカンドキャリアもある。 そしてリスクについても起業は実は中小企業年金とか小規模企業共済とか、失業保険のようなセーフティネットもある。
格ゲーコミュニティの発展にはプロゲーマーが必要だし、だからこそ業界がちゃんとビジネスとしてユーザ、起業、プレイヤーの三方良しの構造として成熟していく必要がある。
じゃあどうするんのよ?
単純に格ゲーコミュニティがちゃんとわかるビジネスマンがもっともっと関わる必要があると思う。 ゲーマーが安心して挑戦できる環境を作るのは俺等おっさんの仕事の一つだと思っていて、麻雀のMリーグもCAの藤田さんの力が大きかったように、そういう人が必要だと思う。 でそういう人になるためには正直そこそこ資本を持った人*7が本気で向き合う必要があると思う。 VARRELの本体であるCELLORBの佐久間さんとかは良い例だと思う。
言い方が難しいけど金持った人が自己資本を使って投資しながら健全なビジネスモデルを作って行く必要がある。 で残念ながらまだ俺はそこまでの資本がない。 経営者としての実績もまだまだだし、業界に対する影響力もない。 だから俺は今いるビジネスの世界でまず勝ち上がる必要がある。 そこで成果が出せたら、本当の意味で格ゲーコミュニティに貢献できるチャレンジができると思う。
業界が成長してビジネスの面が大きくなってくればプレイヤーへのリスペクトが薄くなっていくことは多々あるし他の業界でもよくある話である。
— そーだい@初代ALF (@soudai1025) 2026年4月30日
そして格ゲーもそうなりつつある。
ただまだまだビジネスとしてはTAMが小さくて、だからこそ中途半端な状況が続いているというのはある、…
自分ができることをやる
上記のような背景があって、色々考えている中で、たまたま友人が困っていた。 だから、俺ができる範囲で支援することにした。
今回、あきらくんがチームに所属しながら個人スポンサーを持つきっかけを作れたのは業界の成熟のためには良い例が作れたと思う。 チームの契約が終了してもリスクヘッジになるし、格ゲーに直接的な関係性がある業界じゃなくてもスポンサーできる。 個人単位ならスポンサードの金額のハードルも下がるし、こういう事例はどんどん増えてほしい。
もちろん、ただただお金を出すだけじゃなくて、スポンサードして効果があるような取り組みの事例も作っていきたい。 これは俺があきらくんを通じて、プロゲーマーにスポンサードすると良いことがあるぞ!!というマーケティングの挑戦でもある。
他にも複数のスポンサーを持っているプロプレイヤーは居るんだけど大手企業なんだよね。 大手起業の広告宣伝費の財布を狙った戦略はROIを求められる以上に他のスポーツ選手がライバルになって分も悪い。 そうじゃなくて、例えば採用費とか福利厚生費とかでスポンサードできるような仕組みと実績を作っていければいいなと思ってる。
おわりに
まぁ小難しいことは言ったが、結局のところ成果を出したやつが一番偉いので、俺は俺のポジションで、あきらくんはスト6でそれぞれの成果を出していく。 そんな感じで、引き続きみんなもあきらくんを応援していきましょう。 応援していくのは誰もができる最初のプロゲーマーの支援だから。
今年もあきらをよろしくお願いします。








